家を人に貸すと、家賃滞納だけでなく、予想もしていなかったトラブルが発生することも考えられる。そうした困った事態の具体例や、回避するための考え方・注意点を紹介する
入居者トラブルを回避するために、どんなトラブルが起こりがちなのかを認識しておきたい。 アンケート「貸し出し後に困ったことはありますか」の質問(複数回答)では、入居者に関する回答には次のものがあり、アンケート対象者の5.6%が家賃滞納をされている。アンケート対象者が体験した下記の具体的コメント以外にも、さまざまなトラブルが発生する可能性もある。
入居者が家賃を滞納した 5.6%
入居者がトラブルを起こした 5.1%
入居者と退去時の費用でもめた 1%
(ほかの結果については「持ち家を貸すという・賃貸経営のメリットやリスクを理解しよう」を参照)
トラブルが生じた際には、基本的に貸主が対応をすることになる。
こうした入居者トラブルに対応するのが大変、時間的・物理的に無理な場合は、入居者管理(一戸建ての場合は建物管理も)を不動産会社に委託するのが望ましい。家賃の数%程度のコストが管理費としてかかるが、手間がかからず、安心感を得ることができる。
また、こうしたトラブル発生の心配をしなくても済む方法として、信頼できる相手、つまり身内や知人に貸すことが有効と考えられる。ただし、その場合でも、万一のことを想定して賃貸借契約書はきちんと取り交わしておくべきだ。
家賃滞納は、アンケート対象者の5.6%が経験している。ちょっとした入金忘れによる滞納があった場合でも、入居者に連絡し、その後の入金確認をしなくてはならないなど手間がかかる。数日遅れや1回だけうっかりならまだしも、数カ月や1年など継続的に滞納されてしまうことは絶対に避けたい。
滞納を防ぐために入居者を決める際に心がけたいのは、下記のように、入居者の状況と人物をきちんと見ること。
ただ、転職やリストラ、勤務先倒産など、入居者の家計に予期しない変化が訪れる場合もあるだろう。また、入居希望者に対して目の肥えた不動産会社といえども、人物の評定が難しい面もある。連帯保証人に関しても同様だ。
そうした事態を防ぐための手段として、入居者に「家賃保証サービス」へ加入してもらう方法が挙げられる。家賃保証サービスとは、入居者に一定の保証料(入居時に家賃1カ月分、毎月、家賃の0.5%など会社によって異なる)を、家賃保証サービスを提供している賃貸保証会社に支払ってもらい、家賃滞納が生じた場合、賃貸保証会社が一定期間の家賃を貸主に支払うシステム。
これは、貸主にとっては負担が少ないのに保証が得られるというメリットがあり、入居者にとっては連帯保証人がいなくても賃貸契約を結べるメリットがある。だが、入居者にとってコストがかかるというデメリット面もあるので、物件によっては、家賃保証サービス加入という条件付きだと、入居希望者が現れないことも考えられる。その場合は、貸主負担で家賃保証サービスに加入することも有効だ。
また、サブリース(一括借り上げ)を利用する場合なら、月々の家賃収入は保証されているので安心だ。ただし、サブリースは1物件を対象としている会社が少なく、受け取る家賃も相場より低くなるのが一般的。
毎月の家賃入金をしっかり確認することは、家賃滞納を防ぐことにもつながる。
滞納の原因がうっかり忘れなら、早めに連絡をすることで回収は比較的容易だ。だが、連絡が遅れると、入居者が一度に支払う家賃が2カ月分、3カ月分と高額化し、支払えない状況に陥ることもあり、また、家賃滞納が常態化してしまうことにもなりかねない。
家賃滞納が起きた場合、下記のような流れで対応していくことになる。入居者管理を不動産会社に委託している場合は、不動産会社が代行する。
事実を証明する材料となるので、書類は内容証明郵便にするとよい。
また、家賃滞納は実は5年で時効と定められており、時効後には請求できなくなってしまうので要注意。ただし滞納者に家賃滞納の事実を認めさせた場合は、時効を中断することができる。時効にしないためにも、督促状に捺印をさせるなど、早い段階で事実を認めさせることが大切だ。
賃貸経営を賢く行うためのノウハウや豆知識、成功のためのコツなどをご紹介いたします。
文/金井直子 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー