不動産所得が生じると
確定申告をする必要がある

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家賃収入があると「不動産所得」に対して課税され、毎年、2月から3月にかけて確定申告をして納税することになる。計算方法などの税知識や手続き方法について知っておこう

賃貸経営の所得にかかる税金

個人が不動産の賃貸経営で家賃やそのほかの収入を得ると、その利益は「不動産所得」となる。不動産所得とは、不動産収入から必要経費を差し引いたもの。

「不動産収入」ー「必要経費」=「不動産所得」

賃貸経営における必要経費とは、不動産収入を得るために必要とする費用のことで、主に下のような項目がある。

  • 支払い利子…借入金(ローン)の利子部分(賃貸経営開始後の利子)
  • 減価償却費…建物や設備の経年による価値減少相当額
  • 損害保険料…建物に掛けた火災保険など
  • 旅費交通費…賃貸経営(入居者募集や管理)で生じた移動費用
  • 通信費………不動産会社や入居者との連絡で発生した電話代や郵便代など
  • 宣伝広告費…不動産会社に支払う仲介手数料や広告費
  • 管理委託費…管理を委託している不動産会社に支払う費用
  • 水道光熱費…貸主負担があれば、その水道代や電気代
  • 修繕費………建物、付属設備の修理やリフォーム費用
  • 租税公課……固定資産税・都市計画税、印紙税など

ちなみに、リフォーム費用のうち、賃貸物件に新たに設備や機能を付加して不動産価値を高めるもの(新機能のシステムキッチンに交換など)は、経費ではなく、物件の取得原価と見なされて「減価償却費」の対象となるので注意したい。
減価償却とは、建物や設備などの資産の取得時にかかった費用を必要経費とせずに、その資産の耐用年数で分割して必要経費とすること。耐用年数と償却率など、算出方法は資産ごとに税法で定められている。

年に1回、税務署に確定申告を

賃貸経営で家賃収入があれば、確定申告をする必要がある。ただし、給与所得について年末調整を受けた人で、不動産所得と給与・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下である場合には確定申告はしなくてもよい。
確定申告の対象となる不動産収入は、1月1日から12月31日までの間に得た家賃・管理費(共益費)・礼金・更新料と、敷金・保証金のうち返還しなくともよいことが確定している金額。そこから必要経費を差し引いた不動産所得が課税対象となる。

申告期間は翌年2月16日から3月15日まで(曜日によって変わる年もある)の1カ月間。
申告書類は、国税庁のサイトにある「所得税(確定申告等作成コーナー)」内にある申告書類をプリントアウトするか、税務署でもらうなどして入手できる。
申告書提出方法は次のとおり。

  • 税務署の窓口へ持参
    …期間内の税務署は混み合うので早めに行うのが望ましい
  • e-Tax(国税電子申告・納税システム)で申請
    …平成24年分の申告については最高3000円の控除を受けることができる(初回のみ。翌年以降については未定)
  • 郵送

確定申告については、下記の国税庁のサイトの該当ページに詳細な説明が掲載されている。不明点がある際は、税務署に問い合わせると質問に答えてくれる。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm

確定申告の準備として、収入と支出についての帳簿を日々作成しておくことが大切。家賃収入や経費を現金でやり取りした場合は、領収書などの書類を保存し、また、領収書のない交通費などは、支払い記録を作成する。 ほかの収支(給与や生活費など)と明確に区別する必要があるので、家賃収入等や各種支払いに関しては、賃貸経営の専用口座を設けておくと管理がしやすい。

所得税額の計算方法

所得税は、個人の「所得」(収入から必要経費を引いた額)に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から「控除」を差し引いた額(「課税所得」という)に所定の税率を適用して計算する。

「所得」-「控除」=「課税所得」

「所得」には次のように10種類ある。

  • 給与
  • 退職
  • 事業
  • 不動産
  • 山林
  • 利子
  • 配当
  • 譲渡
  • 一時

不動産所得以外にほかの所得がある場合も、全ての所得を合わせて確定申告することになる。

「控除」には次のように14種類あり、対象者や控除額は種類ごとに異なる。

  • 基礎
  • 扶養・特定扶養
  • 配偶者
  • 配偶者特別
  • 寡婦・寡夫
  • 障害者
  • 勤労学生
  • 小規模企業共済等掛金
  • 社会保険料
  • 医療費
  • 生命保険料
  • 地震保険料
  • 寄附金
  • 雑損

税額は「課税所得」に下図の税率を適用して計算する。

課税所得 税率 速算控除額
195万円以下 5% 0円
195万1円~330万円 10% 9万7500円
330万1円~695万円 20% 42万7500円
695万1円~900万円 23% 63万6000円
900万1円~1800万円 33% 153万6000円
1800万1円以上 40% 279万6000円

【計算例】課税所得500万円の場合、税額は57万2500円となる
500万円×0.2ー42万7500円=57万2500円

赤字がある場合、「損益通算」できる

原則として所得は全て合算して納税することになっているため、確定申告で、給与所得分も含めて税額を計算し直すことになる。
不動産所得で赤字が発生した場合、「損益通算」をすることで、赤字を給与所得から差し引くことができ、給与所得で納めていた税金のうち一定額が還付される(還付金額は給与等によって異なる)。

「損益通算」とは、ある所得で発生した赤字とほかの所得の黒字とを相殺して所得税を計算する制度のこと。損益通算ができる所得は次の4種類。

  • 不動産所得(ただし、土地代の借入金の利子部分は対象外など例外規定がある)
  • 事業所得
  • 譲渡所得
  • 山林所得

ちなみに住民税に関しては、所得税の確定申告をすると自動的に損益通算されて、税額が決まる。

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文/金井直子 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー

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