入居者審査を経て
賃貸契約を結ぶ

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入居申し込みを受けたら、信頼して部屋を貸せる人物かを見極めて入居者を決定する。細かい契約条件を調整して不動産会社に契約書を作成してもらい、契約を締結する

入居者の決定から契約準備まで

入居希望者から申し込みを受けたら、入居者を決定して契約の準備を進める。
入居申し込みから契約・入居までの流れは下記の通り。

(1) 入居申し込みを受ける

申し込みは、仲介会社が用意した書式の書面で受け取るケースが多い。一般的に申込書には、入居希望者や連帯保証人の氏名、住所、電話番号、勤務先、年収などを記入してもらう。申し込みした後に、入居希望者が撤回することもある。複数人の申し込みがある場合などでも、焦らずじっくり確認しよう。

(2)入居審査をする

家賃の支払い能力があるか、家賃を滞納したりトラブルを起こすような人柄でないかなどを、次の要素を基に判断する。

申込書の内容
勤務先、年収、勤続年数などで家賃の支払い能力を判断
入居申込者の行動
不動産会社の担当者から、部屋探しから申し込みまでの入居申込者の行動・人物の雰囲気について聞き、判断する
連帯保証人の意思
入居申込者の同意を得た上で連帯保証人に連絡。保証人となることへの意思確認の結果で判断

入居審査の結果は、不動産会社の担当者に、いつまでに返答したほうがよいか確認する。契約を断る場合には、個人情報取扱の観点から、入居申込書類は速やかに入居申込者へ返却したほうがよい。

(3)入居予定者に物件の情報を伝える

不動産会社は、宅地建物取引主任者から入居予定者に向けて重要事項を説明することが義務づけられている。そのため、貸主は契約締結前に必ず、物件に関する情報を不動産会社の担当者にしっかり伝えておく。伝えるべき情報を開示せず、入居後に何らかのトラブルが発生した場合、貸主の責任を問われることがある。
賃貸物件の重要事項は次の事柄を差す。

物件の表示
所在地、種類、名称、号数、間取り、面積、交通
貸主
氏名、住所
登記記録
登記上の権利関係、抵当権など所有権以外の権利
貸主の都合(ローン返済の遅滞など)により抵当権が行使されると、貸主が変わり、新貸主から入居者が退去勧告された場合、入居者は6カ月以内に該当物件から退去せざるをえない可能性もある
用途・利用制限
居住人数制限、楽器使用、ペット飼育、石油ストーブ使用など
電気・ガス・水道
契約会社や契約アンペアなど
住宅設備
エレベーター、駐車場、エアコンの有無、ユニットバスか否かなど
付帯設備
コンロ、照明、網戸などの有無や、傷があるなど物件の状態など
契約条件
家賃、敷金、礼金、契約期間、更新、解約予告や契約解除、
損害賠償、仲介手数料、管理の委託先など

なお、住宅設備の説明書やインターネット接続マニュアル、マンションの管理規約など、その物件で暮らすのに必要な書類は、入居日までに部屋に用意しておきたい。

(4)要望や条件を調整する

貸主は、契約日や家賃発生日、付帯設備についての取り決め、保険の加入、駐車場や駐輪場使用の有無など、契約条件の細かい点を調整して入居者に伝える。後で入居申込者から家賃や敷金、入居日、利用制限などに関しての要望が入ることもある。細かい点まで検討して明確にしておこう。

契約書のチェックポイント

貸主は条件の調整を終えたら、賃貸借契約書を不動産会社に作成してもらう。契約後のトラブルを防ぐために、契約条件が正確に書面に反映されているのか、貸主自身で確認することが大切。

不動産会社を通さないで賃貸借契約を結ぶ場合は、国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書 」などを参考に作成するとよいだろう。

賃貸借契約書で定められている一般的な項目は次の通り。

(1)契約期間・更新

「普通借家契約」「定期借家契約」のいずれか。契約期間は正しいか。更新手続きや更新料の取り決めがあるか

(2)家賃や管理費(共益費)

家賃、管理費(共益費)の額と受取方法、受取期日。滞納時の延滞金や延滞利率。家賃改定の取り決めがある場合はその内容

(3)敷金返還

敷金の金額と返還に関する具体的な手続き内容。敷金返還と原状回復費用の精算に関するトラブルが多いので、原状回復に関する取り決めをしっかり確認。基本的には、国土交通省による「原状回復ガイドライン」に沿った内容を記載するが、特約があればしっかり確認

(4)反社会的勢力の排除

国土交通省が平成24年2月に公表した「賃貸住宅標準契約書」で「貸主及び借り主が暴力団等反社会的勢力ではないこと」などを確約する条項が盛り込まれることになった。これらに反する場合、契約の解除が可能

(5)禁止事項

禁止事項の例としては、ペットの飼育、楽器演奏、石油ストーブの使用、勝手に他人を同居させること、無断で長期不在にすること、危険物の持ち込みなどが挙げられる

(6)入居中の修繕

入居中の物件の修繕に関する取り決め。一般的に、通常の使用に必要な修繕は貸主が行うが、入居者の故意や過失によって生じた破損は入居者負担となる。これらが明確に記載されているか

(7)賃貸借契約の解除

貸主から契約解除する場合の条件(例えば家賃滞納、禁止事項違反などがあった場合に解除するなど)

(8)入居者からの中途解約

入居者が解約通知すべき期日や具体的な手続き方法

(9)原状回復の範囲と内容

本来は貸主負担であるべきものを、入居者負担とする特約を付ける場合は、入居者への説明と意思確認を慎重に行う必要がある

(10)特約事項

その他の契約条件がある場合は、特約事項として取り決める。貸主側で個別の要望がある場合は、貸主と入居者で話し合って合意すれば、契約書に記載する。ただし、入居者にとって不当で不利益な特約はトラブルの原因となるので、必ず合意を得た上とすること

契約締結当日に行うこと

賃貸借契約書の内容を確認したら、契約手続きをする。契約締結は基本的に、貸主、入居者(借主)が不動産会社に集まって行う。不動産会社が貸主と入居者との契約書のやり取りを郵送ですることもある。不動産会社に集まって契約締結を行う場合、不動産会社が契約書の内容を読み上げて双方で確認し、署名・捺印を行う。
貸主は入居者から前家賃・礼金・敷金などを受け取り(入居者から直接、あるいは不動産会社経由で貸主の指定口座に振り込まれる場合もある)、前家賃と礼金の領収書、敷金の預り証を発行する。
そして、入居者へ鍵を渡して終了。入居者から鍵の預り証を受け取ることもある。
貸主と入居者は不動産会社に仲介手数料を支払い、領収書を受け取る。

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文/金井直子 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー

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