住まなくなった持ち家。
選択肢は「売る」「空き家のまま」「貸す」の3つ

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持ち家に住まなくなったら、売却する・空き家として維持する・賃貸に出すといった選択肢から状況に合った手段を選ぶことになる。どんな注意点があるのか探ってみよう

住み替えることになったら持ち家をどうする?

転勤や転職、家族や収入の変化などによって、家を住み替えることになった場合、持ち家をどうするのか考えなくてはならない。その選択肢は主に3つある。「売却する」「空き家のまま維持する」、そして「賃貸に出す」の3つだ。

売る場合、建物を維持する必要がないので精神的に楽である半面、住宅ローン返済が残っていれば、その残債を一気に清算する必要がある。空き家として維持する場合は、住みたくなったらいつでも住めるメリットはあるが、建物の劣化や防犯上の心配が生じる。貸す場合は、家賃収入を得られるメリットがあるが、逆に空室や家賃滞納などのリスクがある。

実際に住み替えることになったときに、みんなどのように考えたのだろうか。リクルートが実施した「賃貸オーナーに関するアンケート」(下図)によると、「賃貸以外は検討しなかった」が25.7%、つまり7割強の人が「賃貸に出す」と並行してほかの手段も検討している。具体的には「売却を考えた」が最も多く、さらに「売却査定に出した」「空き家のままも検討」と続く。このアンケートは賃貸オーナーが調査対象なので、結果として「賃貸に出す」ことを選んだ人ばかりなのだが、それ以外の手段を同時にいろいろ検討していることがうかがえる。

■賃貸経営をする人が「賃貸に出す」以外に検討した手段(複数回答)

賃貸経営をする人が「賃貸に出す」以外に検討した手段」(複数回答)

「売る」「空き家のまま」「貸す」のメリット・デメリット

では、持ち家をどうするかの具体的な手段について、それぞれのメリットやデメリット、注意点を考えてみよう。

売却する

メリット
  • 保有し続けることで発生する費用(固定資産税や維持費など)がかからない
  • 別の物件を購入する際に、残債がない場合は売却代金を購入資金に充てられる
  • 建物の維持やメンテナンスの手間がかからず、精神的に気楽でいられる
デメリット
  • 住宅ローンの返済が残っていると、売却時に残債を一気に返済しなくてはならない。売却時に残債と同程度もしくは上回る額で物件が売れないと、貯金などの自己資金を清算に充てることになる
  • 売却の際には仲介手数料や登記費用など、ある程度まとまった費用がかかる
  • 不動産という資産を失う

アンケートでは、賃貸に出すことを選択した理由(複数回答)として、7.8%が「売却しようとしたが、残債を清算できなかった」としている。
売却価格で残債の清算と諸費用の支払い分をまかなえればベストだが、よほど立地のよい物件でない限り、購入価格より売却価格が高くなるケースはまれだ。売却する場合はしっかりした査定で物件の売却価格を見極めることが必須となる。

空き家のまま維持する

メリット
  • 持ち家に戻ることになったら、いつでもすぐに戻れる安心感がある
  • 不動産という資産を保有し続けられる
デメリット
  • 親族や管理会社などに定期的な管理を任せる必要がある
  • 窓を閉め切ったままにしておくと建物が湿気で傷みやすいため、痛みを避けるには定期的に通気させる手間がかかる
  • 不法侵入など防犯面の心配が生じる
  • 租税公課や維持費などコストがかかり続ける

セカンドハウスや別荘として自分で使用するなら維持管理しやすいが、できない場合は、ある程度の維持費が発生するものと考えたほうがよい。一戸建ては庭のメンテナンスも必要だし、マンションなら管理費や修繕積立金が引き続きかかるのも忘れないように。

賃貸に出す

メリット
  • 賃貸経営による家賃収入が得られる
  • 将来、その家に戻って住むこともできる
  • 不動産という資産を保有し続けられる
デメリット
  • 空室期間で収入がない期間が生じる可能性がある
  • 家賃滞納などの入居者トラブルが発生する可能性がある
  • 建物の劣化や設備の故障による修繕費、固定資産税などの経費が発生する
  • 確定申告、物件の維持管理など、賃貸経営上の手間がかかる

アンケートでは、賃貸に出すことを選択した理由(複数回答)として、59.7%が「売却よりも賃貸の方が資産活用に有利だと思った」としている。

以上のように、3つの選択肢のそれぞれにメリット・デメリットの両面がある。賃貸に出すことのみを考えていたとしても、場合によっては貸さないほうがよいケースもある。何がベストな手段なのか、「売る」「空き家のまま」といった手段も検討して、自分にとってよりよい手段を選んでいくとよいだろう。

リクルート「賃貸オーナーに関するアンケート」調査概要
※アンケート対象者:
  • (1)居住用に購入した自己所有の家を賃貸に出している人
  • (2)土地活用のためアパートマンションを建てて賃貸経営をしている人
  • (3)投資用にマンションを購入して賃貸経営をしている人
  • ※回答数:412人
  • ※実施期間:2012年5月19日~21日
  • 実施エリア:東京、神奈川、千葉、埼玉
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文/金井直子 イラスト/江口修平 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー

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