世の中の金利動向に強く影響を及ぼしているのは債券市場であると言えます。今回は、その債券市場の価格変動の特徴から考えられる住宅ローンの金利タイプの選び方についての注意点をまとめたいと思います。
まずは、住宅ローンの金利タイプとその内容についてです。住宅ローンの金利タイプは大別すると下の表の3タイプがあり、それぞれに特徴があります。
変動金利型 | 民間住宅ローン利用者の60.3%(※)がこの金利を選択。 優良貸出先に適用される短期の貸出金利に連動するタイプ(短期プライムレート)が主流。 →短期金利に連動 |
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全期間固定金利型 | 民間住宅ローン利用者の14.6%(※) がこの金利を選択。 10年満期の国債の利回りである長期金利の動きにリンクしている。 →長期金利に連動 |
固定金利期間選択型 | 固定金利期間の短いもの(2年、3年など)は短期金利、長いもの(10年、15年など)は長期金利に連動する傾向がある。 |
短期金利と長期金利から、住宅ローンの変動金利型や全期間固定金利型などがどのように変動するか、考えてみましょう。
短期金利 | 変動金利型や固定金利期間選択型(2、3年など)に影響を及ぼす |
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長期金利 | 全期間固定金利型や固定金利期間選択型(10、15年など)に影響を及ぼす |
そして、ポイントは短期金利よりも長期金利のほうが先に動くということです。
その理由を先行きの金利の予測別にご説明しましょう。
市場金利の水準を決めているともいえる債券市場では、日々、債券の売買が行われています。債券市場の大半を占める固定利付の債券価格の性質としては、市場金利の上昇は債券価格の下落を意味し、市場金利の低下は債券価格の上昇を意味します。
詳細はローン金利に影響を及ぼす債券市場って、どんな市場?を参考にしてください。
「借入当初、変動金利を選んだが、金利が上がりそうになったら固定金利タイプに切り替える」ことを検討している人は、要注意です。
理由は「金利が上がりそう」な場合、下記のような状態になっていると考えられるからです。
このように結果的には固定金利への切り替えにより、返済額は大幅にアップしてしまうかもしれません。
よって、理想的なタイミングは「固定金利型の適用金利が上がる前に変動金利型から固定金利型に切り替えること」となります。
しかし残念ながら、長期金利が上がる直前のタイミングをうまく捉えようとすること自体が非常に困難だといえます。後になってみれば、あのときが長期金利の上昇の起点だったということは確認できますが、上がり出す前の絶妙なタイミングを事前に察知することはほぼ不可能だといえるでしょう。
以上のように、金利の上昇・下落のタイミングは固定金利型と変動金利型では違います。
住宅ローンで変動金利型を利用している人や、これから変動金利型を利用しようと思う人は、「金利が上がりそうになったら固定金利型に変更すればいいや」などと安易な気持ちでいるのではなく、適用金利が上がり始めるころには、長期金利のほうが先に上がっている可能性が高く、固定金利型に変更すると返済額が大幅に増えるかもしれないことを認識しておく必要があるでしょう。
イラスト/杉崎アチャ