「静かな雰囲気だし、お店の人もよくしてくれる。安心して子どもと買い物に行けますね」。こう言って微笑むのは、3歳になる長男と商店街で買い物をしていた平野さん(仮名)。毎日商店街を歩いていれば、お店の人は子どもの顔をきちんと覚えてくれる。もちろん成長の軌跡も性格も把握済み。面倒を見てくれたり、子どもがちょっとグズッたら優しく声をかけてあやしてくれることも。子ども連れでも気兼ねなく買い物できるのは、商店街の魅力だ。
【写真】お母さんに品物を渡す時も、子どもへの声かけは忘れない。子どももショウウィンドウに興味津津。
“子ども1人だけのおつかい”は、「迷子にならないか」「ちゃんと買い物できるか」など、親からすれば不安で心配でたまらないもの。その点、人情味豊かな商店街ならば、街ぐるみで子どもを見守ってくれるから安心だ。「小さな子どもが1人で頑張って買い物に来たら、なんだかうれしくなっちゃう。だから声をかけちゃうんだ」と、八百屋の主人が話すように、お店の人から道行く人までみんなが声をかけてくれる。これが、”子ども1人でも安心”のワケだ。
【写真】「1人で来たのかい? 偉いね~」。青果店「びっくり屋」のご主人は、優しく子どもに声をかける。
お店の前で赤ちゃんを抱いて夕涼みをしている奥さんが、通りすがりの親子連れに話しかける。「おいくつですか?」「まだ生まれたばかりなんですよ」。会話が弾み、距離が縮まる。大人も子どもも、みんな自然と交流が深まっていく。困ったときに助け合える仲間が増えるのは心強いこと。そして、いろんな人との交流のなかで子どもの感性も磨かれてゆく。薄くなりつつある近所づきあいも、下町の商店街にはまだまだ残っているのだ。
【写真】豊津さんが営む「炭火魚串 吉良」の軒先は、夕方になると地域の親子連れの社交場に早変わり。
子どもと一緒の買い物では、重いものを持つのはちょっと骨が折れる。そんな時は、当日中に家まで配達してくれるサービスがありがたい。スーパーの配送サービスと違うのは、お店の店主が直接配達してくれること。客の事情に応じて臨機応変に対応してくれるし、伝票書きの面倒な手間もナシ。これもお互いの距離が近い商店街ならでは。
【写真】「三理酒店」は醤油1本からでも配達OK。時には電話一本で駆けつけることもあるそうだ。
商店街と言えば、長~いアーケードにいろいろなお店がぎっしり立ち並んでいるのが一般的だ。ルミエール商店街は、端から端まで140店舗以上。軒先に商品を出しているところも多く、見て歩くだけでも楽しめる。もちろん、ありとあらゆる業種のお店が揃っているので、生活必需品からちょっとマニアックな趣味のアイテムまで、欲しいものが必ず手に入る。年配の人も子どもも満足できる、充実の店舗ラインナップは、商店街最大の魅力の一つだ。
【写真】生鮮食品や日用雑貨、時計、カバン、おもちゃ……。140店舗の顔ぶれは、実にさまざまで個性的だ。
「お茶のことならなんでも聞きにきてね!」。こう話すのは、茶葉専門店「なぐら園」のお母さん。昭和8年創業の老舗で、「ここに来ればお茶の話が聞ける」と訪れる客も多い。商店街にはこうした専門店がたくさん並び、その道一筋の店主たちは商品のことなら知らないことはないスペシャリスト揃い。「親戚が来るんだけどどのお茶出せばいいの?」など、困ったことがあれば、どんなことでも相談に乗ってくれる彼らは、暮らしのアドバイザーでもあるのだ。
【写真】「なぐら園」は昔ながらの”量り売り”を今も続ける。こうした光景も商店街ならではだ。
毎日使うカバンや靴、家電製品。何かの拍子に壊れてしまうこともある。そんな時、プロフェッショナルたちが営む商店街のお店に駆け込めば、気軽に修理を受け付けてくれる。「顔なじみのお客さんばかりだし、タダで修理することもありますよ」と、カバン専門店「マルゼン」の店主が言うとおり、修理はほとんどがサービス価格。大きな家電製品なら自宅まで見に来てくれる電気屋さんも珍しくない。そんなお店が近くにあれば、頼りになること間違いなしだ。
【写真】「マルゼン」では、修理は近くの工房で。壊れにくい使い方のアドバイスもしてくれる。
商店街は閉店時間が早い印象が強い。でも、共働き夫婦が増えてきた昨今、遅くまで営業している店も多くなっている。24時間スーパーが入っていることもあるし、古くからの商店が夜11時まで営業しているケースも。帰宅が遅くなっても、おばちゃんが作った手作りのお惣菜を夕食にできる。これは大型スーパーにはない魅力だ。
【写真】老舗の酒屋さんが営む惣菜店。夜10時半までの営業で、夜には帰宅途中の会社員でにぎわう。
「子育て地蔵」に親子が集う
入口で「子育て地蔵」が迎えてくれる、まさに子育てにぴったりの商店街。小さくとも温かみのある商店が軒を連ね、夕方になると子ども連れの買い物客で溢れかえる。
【DATA】
商店街住所 東京都文京区
アクセス 東京メトロ有楽町線江戸川橋駅
店主と交わすお喋りが、買い物の楽しみ
夕日がキレイな「夕やけだんだん」で御馴染みの”ザ・下町”商店街。店先で客を出迎える店主たちは、みな気さく。彼らとのお喋りが、買い物の楽しみの一つだ。
【DATA】
商店街住所 東京都台東区
アクセス 東京メトロ千代田線千駄木駅
商店街の飲食店は、街の社交場
昔ながらの定食屋さんや飲み屋さんが多く、どの店の中でも客同士がざっくばらんに交流を深める。見知らぬ人でもすぐに親しくなれる雰囲気が、下町商店街のいいところ。
【DATA】
商店街住所 東京都葛飾区
アクセス 京成押上線立石駅
日本トップクラスの店舗数はなんと250以上!
全長800m、店舗数250以上の超大型商店街。定番のチェーン店から個性派専門店まで多種多様な店が並び、手に入らないものはない。遠くから訪れる人も多い。
【DATA】
商店街住所 東京都品川区
アクセス 東急目黒線武蔵小山駅
元祖”○○銀座”は個性派店ぞろい
“○○銀座”の元祖には、レアモノが買えるリサイクルショップ、オシャレな和雑貨屋、夏はカキ氷を売る氷店など、個性的なお店がたくさん。歩くだけで楽しめる。
【DATA】
商店街住所 東京都台東区
アクセス 東京メトロ千代田線千駄木駅
夕飯のおかずは商店街で
お肉屋さんや魚屋さんの軒先には、心をこめた手作りお惣菜がずらり。商店街を歩けば栄養バランスバッチリの夕食の献立になる。忙しい家庭には頼りになる存在だ。
【DATA】
商店街住所 東京都板橋区
アクセス 東武東上線大山駅